理事長からのごあいさつ

 子供のころ母親から「秋の夕焼け 鎌を研げ」という諺を教わりました。

 父親は高校の漢文の教師でしたが、家は江戸時代から続く農家でした。幼いころから農作業の手伝いをさせられました。

 冒頭の諺は、秋の日に夕焼けになると翌日は晴天になり、農作業日和となるので鎌を研いで農作業の準備をしておきなさいという意味です。このように農作業を手伝うことによって、鎌の研ぎ方、鋸の使い方、鍬の柄の取り換え方など、たくさんの知識と知恵を身につけることができました。道具の使い方を誤ると、事故につながります。

 現代社会では鎌や鋸や鍬を使わなくても生活できる環境はいっぱいありますから、そんな事は必要ないよともいえます。しかし、そんな道具を使って「考える」「工夫する」ことから身につく知恵が大切です。知識は文献や周りの人から教わる事ができます。しかし、知恵は自らが体験して覚えていかないと、身につきません。

 私は、子供のころから、よく森や林へ遊びに行きました。木立の中の岩がとびだしている下に窪みがあるのをみつけ、葉の付いた枝で壁を作って部屋を作りました。そこを仲間たちで「すみか」と呼んでいました。これは、住家でもなく棲家でもなく、いい意味での隠れ家、アジトのような場所でした。その場所は、仲間以外には家族にも教えませんでした。座布団を持ち込んで一晩過ごしたこともあります。このような体験から、たくさんの知恵を身につけました。

 私と”にいはま森のようちえん”との出会いは、私が勤めるホームセンターでした。初代理事長のさなえちゃんが買い物に来て、「領収書を下さい。宛先を”にいはま森のようちえん”でお願いします。」と言うのです。「それは何処にあるのですか?素敵な名前ですね。」と聞くと”にいはま森のようちえん”のポリシーを教えてくれました。その後、「何かお手伝いしましょうか」と声をかけたことからご縁が始まりました。

 それから、さなえちゃんから、ご主人の母国カナダへ帰るので「温さん、理事長をお願いできませんか?」と連絡があったのです。そんないきさつで、現在”にいはま森のようちえん”の理事長として、皆を見守っています。

 ”にいはま森のようちえん”では、子供たちに自然のなかでいっぱい体験し、いっぱい疑問に突き当たり、いっぱい考えて、いっぱい知恵をつけてほしいと思っています。
 さあ、一緒に街から自然のなかへ行きましょう。

2020年3月吉日

NPO法人にいはま森のようちえん
理事長 白岡 温(しらおか おん)